最近、「舟を編む」を読んだので、感想をまとめました!
「舟を編む」は三浦しをんさん原作の、辞書を作る人たちのお話です。
あらすじ
辞書『大渡海』を編纂することになり、自分の後継者となる人材を探していたベテラン編集長の荒木は、辞書作りにぴったりの人物を見つける。
それが、27歳の出版社社員、馬締光也だった。
馬締は変わり者と言われておりコミュニケーションが苦手な青年だが、言葉に向き合い、真摯に辞書作りに打ち込むことになる。
新しい環境で馬締が出会ったのは、言葉を愛し研究に一生を費やす学者の松本先生。
馬締とは正反対で器用で外向的な性格だが、不器用な馬締の世話を焼き、なんだかんだ辞書の仕事を愛している同僚の西岡。
そして、馬締が恋に落ちる、板前の香具矢という女性。
彼らと共に、言葉について議論したり、言葉の伝え方に悩んだり…。
恋や仕事に悩む普通の人間が、どのように言葉に向き合い、辞書作りに関わるのかといったお話です。
全体的な感想
最初、辞書作りをテーマにした物語と聞いて、堅苦しく、地味な仕事をひたすら繰り返す、苦悩に満ちた物語なのだと勝手に勘違いしておりました…。
しかし、そんなイメージを超えて、この本を読むととても温かな気持ちになりました!
ごく一般的な悩みを持つ普通の人間が、辞書を作るうえで言葉に向き合い、人と向き合い、人生を進めていく物語です。それぞれが自分のできることを発揮しながら辞書を一生懸命作り、読む人のことを考えて言葉に向き合う続ける優しさに溢れた物語でした。
辞書作りのイメージも180度変わります。
古い言葉を残すと同時に、辞書を引く人がどのような気持ちになるのかを徹底的に考え、現代の価値観につながるような言葉を選んだり、人を思いやる優しさで辞書は作られているのだと気づきました。
そして、誤字脱字を防ぐためチェックを徹底したり、紙の「ぬめり感」までこだわったりなど、登場人物の仕事への情熱は見習わなければと思うほどです。
宮下奈都さん原作の小説、「羊と鋼の森」を読んだときにも感じたような、淡々と静かな中に、熱いものがこみあげてくるような感じがしました。
文章もちょっと変わっていて面白いです!
全然聞いたことのない古い言葉を引用しながら、現代的な表現で補ったりしていて、その言葉の意味や疑問点を登場人物たちと一緒に考えたりと、文章を楽しみながら読めました。
登場人物も個性的です。それに、とても一生けん命で、いい人ばかりです。この小説は、それぞれの章でそれぞれの登場人物の視点から物語が語られています。
彼らの抱える悩みは誰もが抱いたことのある悩みばかりで、親しみが持てます。
印象に残った点【ネタバレ】
西岡の苦悩
チャラくて、お調子者で、一見に辞書作りに向いていなさそうな西岡。
ですが、持ち前の器用さで辞書作りへの障害を取り除いたり、恋に悩む馬締の肩を押したり、辞書作りや馬締の恋の成就にあたって大活躍します。
また。自由な発想をしたり、意外な点に疑問を抱いたりできるため、それが辞書作りにあたって新しい視点をもららすこともあります。
そんな西岡は、馬締に少し劣等感みたいなものを抱いていたことが発覚しました。
器用貧乏な自分と違い、何かひとつのことに真剣に打ち込める馬締のことを羨ましいと思っていました。そして、そんな彼なりに辞書作りを愛していて、誰かに見られていなくてもいい、知られなくてもいいから、陰ながらみんなを助け、そっと見守ろうという姿勢に胸が熱くなりました。
私は西岡ほど器用に生きられませんが、昔から勉強や仕事に対しては器用貧乏なところがあり、何か一つのことを極められる人たちを羨ましいと思ったことがあります。しかし、自分には自分の強みがあり、自分にできることをして、誰かをサポートすることも大切な役割だと考えさせられました。
彼は物語途中でフェードアウトしてしまいますが、13年後の子煩悩パパの西岡も、もっと登場してほしかったです(笑)
松本先生の生涯
人生を言葉に捧げた老学者の松本先生。
穏やかな人柄と純粋な言葉への好奇心で、若者たちの悩みに寄り添い、辞書を作るにあたって重要な役割を果たしました。作中には松本先生の名言が多数です。
彼は『大渡海』の完成を待たずして人生の幕をおろしますが、最後まで言葉に向き合い続け、あの世でも言葉を研究したいと言って最期を迎えた松本先生の最後は、実に幸せなものだっただろうなと思えます。
彼の言葉への情熱は、馬締たちに伝えられて、これからも受け継がれていくのだと思います。
映画が視聴可能なサブスクは?
こちらの作品は、松田龍平さん主演で映画化されており、ヒロイン役としては宮崎あおいさんが出演されています!
映画はUNEXT、dTV、ネットフリックスで視聴可能です!
まとめ
本屋大賞を受賞しているこちらの作品。心の栄養となってくれるような温かな作品です。また、恋に悩む人の背中をそっと押してくれるような作品ではないでしょうか。仕事や人間関係に悩んだときにも、ぜひ読んでみてください。
ブックログを読んでくださりありがとうございます!
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